データ活用

2022-01-11

スマートシティとは? 都市の未来像と関連技術を簡単解説

いま世界各国で、 AI や IoT など最新の ICT 技術を活用した街づくりである「スマートシティ構想」が進んでいるのはご存知でしょうか。スマートシティは私達の暮らしをより便利にし、持続可能な社会を創るための取り組みとして注目されています。本記事ではスマートシティの概要や、その関連技術について簡単に解説していきます。

スマートシティとは何か

いま政府が進めている構想のひとつであるスマートシティとは、どのような都市なのでしょうか。まずはスマートシティについて解説していきます。

スマートシティとは?

スマートシティとは、 AI や IoT などの最新の ICT 技術を活用した未来型都市です。その実現には、スマートフォン(スマホ)やスマートウォッチ、スマート家電などに代表されるスマートデバイスに活用されているシステムが大きく関わっています。特にインターネット接続機能を搭載したり、複数のソフトウェアを連携させたりすることで複雑な情報処理をできるようにする役割があります。
政府の進めるスマートシティ構想とは、様々なインフラにこれらの「スマート化」を施すことで、都市をより便利に最適化しようとする取り組みです。

一例ですが、「携帯電話」は当初、名前の通り電話のためにしか使えませんでした。しかし、いまのスマホにおいて電話は無数にある機能のひとつに過ぎません。カメラで撮った映像を SNS に投稿したり、ゲームをしたり、私達はスマホひとつで多くのことをこなせるようになっています。これがスマート化です。

この技術をインフラに適用すると、例えば信号機とセンサー類を連携して AI に交通信号の操作を任せたら、 AI はセンサーを通して周囲の交通状況を把握し、適切なタイミングで信号を切り替えてくれるでしょう。そうなれば、赤信号で無駄に待たされる時間は減少し、都市部の渋滞の緩和が期待できます。実は、こうした「スマート信号システム」は既に実用化されており、ロシアでは実際に導入した結果、渋滞が最大 40% 改善されたというデータもあります(参考:国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構「ロシア14都市でスマート信号システムの導入効果を調査」

スマート信号の例に象徴されるように、スマートシティとは高度な ICT 技術によってデータを収集・分析し、都市運営における様々な問題の解決に役立てる都市構想です。これによって都市環境は改善・最適化され、市民はより良い生活を送れるようになります。

世界的に導入の進むスマートシティ

スマートシティは現在、世界的に導入が進んでいる構想ですが、その背景には「SDGs」の問題が横たわっています。 SDGs とは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略で、 2015 年の国連サミットで世界共通の達成目標として掲げられた概念です。

自然環境の破壊、マイノリティの人権問題、貧富の格差、エネルギー問題など、現代の社会には様々な歪みが生じています。 SDGs とは、こうした歪みを是正して健全に社会を持続させていくための取り組みで、その中のひとつである「住み続けられるまちづくり」を達成するための取り組みとして捉えているのがスマートシティ構想です。

ICT を活用するスマートシティ構想は、様々な企業が参画できる新しい産業に発展する可能性を秘めており、国土交通省を中心に日本政府も強力に後押しをしています。また、新型コロナウイルスのパンデミックもこうしたスマートシティの必要性を際立たせました。テレワークの導入によって都市部への一極集中が緩和される兆候が見える中、防疫に強いまちを創るためにもスマートシティが改めて注目されている点も見過ごせません。

スマートシティを支える 4 つの技術

スマートシティを支える ICT 技術は主に、「IoT」「5G」「クラウド」「ビッグデータ」の 4 つが挙げられます。以下では、これらの技術の概要と、それらがどのようにスマートシティの実現に貢献するのかを見ていきます。

データの収集と都市の制御を可能にする IoT

日本語で「モノのインターネット」と訳される IoT(Internet of Things)は、様々な機器にインターネットへの接続機能を持たせて、データの送受信をする技術を指します。スマートシティにおいて、 IoT は都市の目であると同時に手足の役割も担います。

例えば、最先端の映像認識技術を搭載したIoTカメラやセンサー類を都市に張り巡らせば、そこから都市情報の遠隔収集も可能です。これらに加えて、 IoT 機器による遠隔制御を都市の様々なインフラに実装して制御すれば、インフラの最適化や治安維持にも役立ちます。防犯システムなどは、 IoT 技術の代表例と言えるでしょう。

膨大な情報収集を可能にする 5G

都市の様々な機器を IoT 化すれば、そこで送受信されるデータ量は膨大なものになります。そこで重要となるのが、最新の通信技術 5G です。 5G は従来の 4G と比べて、回線速度が 20 倍、同時に接続できるデバイスは 10 倍にも上るといわれています。 5G によって大容量かつ高速な通信が可能になり、高品質な動画などの送受信も難なく行えるようになるでしょう。とはいえ、 5G はまだ一部の地域しか普及しておらず、全国的に整備されるには時間が必要です。それゆえ、スマートシティへは「ローカル 5G」という形で導入されると想定されます。

情報の基盤となるクラウド

IoT 機器から取得され、 5G 回線を通って伝達されたデータはクラウド基盤を介してやりとりされます。クラウド基盤は、膨大な情報をスケーラブルに扱えるシステムで、スマートシティの外側からでもスマートシティのデータ管理や制御を実行できる設計を実現してくれます。

これによって、例えば大きな地震などでスマートシティに損害が生じた場合でも、スマートシティのシステム自体は損害を受けません。ハードウェアの容量やデータの所在といった側面を気にする必要がなくなるなど、スマートシティのバックボーンに当たる技術です。

最適化を実現するビッグデータ技術

IoT、 5G、クラウド基盤などの活用によって、スマートシティではデータの取得が容易になります。その結果として集められた多種多様かつ膨大なデータがビッグデータです。スマートシティにおいては、 AI などの技術を用いてビッグデータを解析し、問題発見や最適化を実現していくことでしょう。

スマートシティ化した未来都市の先進事例

スマートシティは既に一部の国・都市において具体化しています。続いては、スマートシティ化した未来都市の先進事例をご紹介します。

国全体がスマートシティ化するシンガポール

東京 23 区程度の広さの国土に約 569 万人の国民が暮らすシンガポールは、国丸ごとのスマートシティ化を実施して世界を先導しています。シンガポールは 2014 年にリー・シェンロン首相が「Smart Nation」構想を発表して以来、政府が主導してスマートシティの実現に向けた様々な取り組みをしてきました。 Smart Nation 構想においては、「都市生活」「交通」「健康」「電子政府」「企業・ビジネス支援」の 5 つが重点分野とされており、国民のデジタル認証、キャッシュレス決済の普及、全国的なセンサーネットワークの構築、ライフステージに応じた公共サービスの横断的提供など多岐の分野にわたって国のスマート化を進めています。

クラウド技術が都市と融合する中国・杭州市

中国の杭州市は、中国内の最大手の企業であるアリババ社が自治体と強力なタッグを組んでスマートシティ化を実現しました。アリババ社は「シティブレイン」と名付けられた都市管理をするクラウドプラットフォームを開発し、地方行政に必要なすべての機能をデジタル化するための基盤を構築したのです。

例えば、杭州市では AI が交通状況をリアルタイムで監視し、信号機の自動操作による渋滞緩和や、事故発生時の警察への自動通報システムを実現しています。それ以外にも水道やガスなど、都市インフラを管理する AI システムも確立しており、必要に応じて消防に情報提供して災害への対処をサポートするなどして、都市運営に役立てています。

トヨタが見せる交通の未来 裾野市ウーブン・シティ

日本でもスマートシティ化は実験的に始まっています。静岡県裾野市では、国内大手メーカーのトヨタが「裾野市ウーブン・シティ」計画を推進しています。同計画では、裾野市の一部に 2,000 人規模のスマートシティを一から構築し、ロボットや AI、自動運転、スマートホームといった最先端技術に囲まれた生活の試験導入を実施します。この計画の一番の特色は、シティ内の道路を 3 種類に分けて整備し、完全自動運転を都市生活の中に実際に取り入れるための環境構築をしていることでしょう。さらに、定置式の燃料電気(FC)発電機をシティ内に設置したり、家には太陽光発電システムを搭載したりと、エネルギー問題へのアプローチも試されています。

ビジネス拠点を目指すスマートシティ竹芝

東京都浜松町の竹芝エリアでもスマートシティ計画が進んでいます。竹芝エリアの開発は国家戦略特別区域計画の特定事業に指定されており、官民共同でスマートシティ計画を進めています。中でも民間企業として主導的な役割を果たしているのが東急不動産とソフトバンクで、両社はスマートビルディング「東京ポートシティ竹芝」を建設して、スマートシティ計画の第一歩を踏み出しました。

東京ポートシティ竹芝には館内に約 1,000 台以上のセンサーやカメラが設置されており、混雑状況の可視化や不審者検知などを可能にしています。こうした情報はビルの安全管理や、顧客対応などに活用され、テナント店舗が集客施策のために利用したり、ワーカーが空いているお店を探すのに利用したりできます。スマートシティ竹芝の特徴は、ビジネス拠点としてスマートビルを創るところから始め、スマート化の範囲を街に広めていく点にあると言えます。

まとめ

本記事ではスマートシティの概要や、それを可能にする技術、そして実際のスマートシティの具体例についてご紹介しました。スマートシティ構想においては、 IoT 技術によって都市の様々な情報を取得し、そのビッグデータを都市運営に役立てていきます。こうしたスマートシティ計画は既に一部の国・地域において推進されており、今後さらにその動きは広がっていくでしょう。

スタッフおすすめ記事 ベスト 3

タグ

データ活用 データ分析 ツール 組織 DX ビジネス オープンデータ BI データプラットフォーム 課題 中小企業