データ活用

2022-01-17

自治体のオープンデータの取り組み紹介 その課題と可能性

企業や行政に透明性が求められる昨今、官民協働で利活用できるデータをオープン化する取り組みの重要性が高くなっています。また、オープンデータへの取り組みは、経済活性化や地域の問題解決を推進する効果も期待できます。

そこで、ここでは自治体のオープンデータの可能性と導入・運用の課題を解説し、実際の活用事例を紹介していきます。

オープンデータとは

オープンデータとは「誰もが自由にアクセスでき、再利用・再配布が可能なデータ」のことです。

国のオープンデータ基本指針では、「営利目的・非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されている」「機械判読に適している」「無償で利用できる」という3点に該当しているものをオープンデータとして定義されています。また、国や自治体が保有する公共データを誰もが自由に取り扱えるように公開する取り組みをオープンデータ化と呼びます(参考:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部「オープンデータ基本指針(平成 29 年 5 月)」)。

自治体におけるオープンデータ

オープンデータの歴史を遡ると、世界的なオープンデータ化の源流は、2004年に公開された情報交換フレームワークであるアメリカの「NIEM」と、ケンブリッジ大学の「Open Knowledge International」にあります。その後、 2008 年に国連が、 2010 年に世界銀行がオープンデータサイトを開設し、各国の流れを牽引してきました。

日本政府がオープンデータに本腰を入れて取り組み始めたのは 2012 年です。それを皮切りに制度や規約の整備が進められ、 2016 年には「官民データ活用推進基本法」が公布・施行されました。その中で「国や地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、<中略>国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする」(引用元:首相官邸「官民データ活用推進基本法」)と明記されています。

自治体に対するオープンデータ化の要請は、真新しいものではありません。しかし、自治体の信頼性・透明性向上の面でも意義のあることであり、データの使い方によって社会に大きな貢献ができる可能性を持っていることから、近年になって急速にオープンデータ化が求められています。

自治体のオープンデータがひらく可能性

自治体のオープンデータが将来的にもたらす可能性は、どれくらいあるのでしょうか。ここでは 3 つの可能性について解説します。

経済の活性化につながる

自治体のオープンデータを誰もが自由に活用できる環境の整備によって、社会全体の経済活動が活発になる可能性があります。通常のビジネスでは、マーケティングを実施して地域に需要があるかを確認します。しかし、マーケティングには費用と時間がかかるうえに、サンプルが偏ってしまう場があり、統計学やサンプリングに強い人材がいないと前提が破綻してしまうかもしれません。

しかし、自治体のオープンデータはサンプルの偏りが小さく、その分析から新しいビジネスチャンスを発見できるケースも多々あります。比較的客観的なデータですから、企業の戦略的な意思決定にも寄与します。国や自治体や社会全体がオープンデータを効率的に活用できれば、生産性が向上し、経済活動をより活性化させることにもつながるでしょう。

市民参加の幅を広げる

昨今の少子高齢化や財政縮小によって自治体の負担は大きくなっており、自治体が抱える問題を自らの取り組みだけで解決するのが難しくなってきています。そのため、近年は地元企業と行政が協力して新しいビジネスを開拓するなど、市民の協力が重視されています。

そのためには自治体が保有する公共データをオープンデータ化し、市民に自治体の行政実態を把握してもらわなければなりません。時間がかかりますが、自治体のオープンデータ化は、市民協働のまちづくり促進など市民参加の道を広げ、開かれた地方行政を実現してくれるでしょう。

自治体の抱える問題の解決につながる

オープンデータは自治体行政を見える化し、さまざまな問題点を浮き彫りにします。個人や企業など、外部の観点から自治体のデータを客観的に分析することで、新しい知見を得られる可能性もあるでしょう。市民や企業によって作られた、オープンデータを活用した新しいサイトやアプリなどのデータは、質・量ともに急速に充実が進みます。官民連携による地域の問題解決も不可能ではありません。

自治体がオープンデータに取り組むうえでの課題

オープンデータはより多くのメリットを生み出すことがわかっていますが、実際にオープンデータを効率よく導入・運用するには多くの課題があります。ここでは自治体がオープンデータに取り組む際の重要な課題について解説しています。

ニーズが把握できていない

すべてのデータを公開するのが難しい状況では、どのようなデータにニーズがあるのかを把握しなければなりません。市民や企業などのオープンデータ利用者がデータの開示を求める体制も構築可能ですが、実際に自治体が保有しているデータの内容がわからないと利用者側も要望を出しにくいでしょう。

また、自治体側の「公開できるデータ」だけではなく、「利活用して欲しいデータ」の提示もしておかないと取り組むうえでのメリットを説明できず、民間企業に対する協力要請や予算化も難しくなります。このようなミスマッチングを避けてオープンデータを効率よく活用するには、利活用して欲しいデータの提示や、細やかなニーズの洗い出しが大切です。

導入のためのノウハウが不足している

これからオープンデータに取り組む自治体の場合、導入ノウハウが不足しているケースも考えられます。始めるために必要なのは、オープンデータに関する知識・進め方に関する最新の情報です。政府によるオープンデータに対してのガイドラインなどが公表されているものの、昨今はデータ分析技術などの発展が凄まじく、常に情報が更新されています。とはいえ、取り組みにかかわる情報収集やノウハウ習得は負担が大きいでしょう。

また、情報管理や官庁との掛け合いなど、行政面でのノウハウも必要になるため、自治体によっては対応できる人材不足も懸念されます。以上のことから、民間企業の要請を仰ぐなどノウハウ提供の枠組みが求められます。

導入・運用のためのリソースがない

オープンデータを効率的に導入・運用するためには、十分な人材が必要です。たとえば、データの更新、利活用促進のプロモーション、外部団体との連携など多くの業務が発生します。しかし、自治体によっては、取り組みのために多くの人材を割けないケースがあり、結果としてオープンデータの利活用も進みません。多くの人に利活用を促進して取り組みを効率よく継続するには、運用システムの改善や外部人材の確保が重要です。

自治体のオープンデータの取り組み

ここでは、実際にオープンデータの取り組みを行っている佐賀市と札幌市の事例をご紹介します。

めくるんの交通安全・日めくるん

オープンデータを活用して地域に貢献する佐賀市の市民団体「Code for Saga」が、交通事故の予報を出すカレンダーアプリ「めくるん交通安全・日めくるん」を開発しました。こちらは佐賀県及び佐賀警察本部が提供するオープンデータである「交通事故データ」を活用し、交通事故の多い時間帯を知らせることで市民に注意を促します。全国ワーストである交通事故への対策や市民参加の促進を目的にしています。

さっぽろ観光あいのりタクシー

札幌市では、札幌市提供の「人流データ」を利用して、観光客が使い放題で利用できる乗り合いタクシー「さっぽろ観光あいのりタクシー」の実証実験を期間限定で行いました。札幌市と札幌観光協会がタクシー会社など数社に協力してもらい、 1 ヶ月限定で行った実証実験は、効率的な乗降場所の選定に利用され、キャッシュレス決済や多言語対応のコミュニケーション、観光促進を目的としています。

まとめ

オープンデータは誰もが自由に利活用できるデータです。自治体の保有するデータをオープンデータ化することで、行政の透明性や信頼性の向上、社会全体の経済活動の活性化につなげられます。しかし、効率よく導入・運用するのは簡単ではなく、情報収集やオープンデータに関する知識、多くのリソースも必要です。

コネクトデータでは自治体のみに限らず企業においてもオープンデータ化をはじめとしたデータ活用が有益であると考えています。「delika」は自治体や企業が簡単にプライベートデータやオープンデータを共有し、活用できるプラットフォームです。 DX、データ活用推進担当者の方はコネクトデータまでご相談ください。

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