データ活用

2021-12-06

仮想化とは? メリット・デメリットやクラウドとの違いをわかりやすく解説

コンピューターやサーバー、 OS といった IT インフラにおいて活用されている仮想化。言葉としては耳にしても、具体的にどのようなことを指すのかわからないという方も少なくないでしょう。この記事ではそもそも仮想化とは何かということや、クラウドとの違いを解説します。合わせて仮想化がされているものの種類と、それぞれが持つメリットやデメリットを詳しく紹介していきます。

仮想化とは

仮想化とは物理的には1つしかないリソースを、分割したり、 1 つのリソースの中に統合したり、あるいはないものをあるように見せかけて有効活用させる技術のことです。多くはソフトウェアを使って実行します。

物理的に存在しているリソース内に仮想化ソフトウェアで土台を作り、そこに新たなリソースを作るといったことが行われ、物理的リソースの利便性を高める手助けをします。仮想化を行わなければ物理リソースが増えつづけ、設置場所の問題や管理上のコストなどが増大していくと考えられます。

仮想化はこうした設置場所やコストの削減だけでなく、セキュリティの向上も期待でき、 IT インフラにおけるデータ活用のスピードアップに繋がるとされています。

仮想化とクラウドの違い

クラウドはネットワーク上にある、誰もがアクセスし活用できる環境のことです。クラウドではさまざまなサービスが提供されており、自身のパソコンにアプリケーションをダウンロードして持つ必要がありません。実際に保持していないものを活用できるという点で仮想化と混同されがちですが、先述したように仮想化はそれを行う技術で、クラウドはネットワーク上にあるスペースであり環境です。

仮想化できるもの

仮想化は多くの IT インフラで実行されています。例えばサーバー、デスクトップ、ストレージ、ネットワーク、といったものが代表的です。さらにはデータの仮想化も行われており、情報活用や多くのタスクを効率的に行えるようになります。

ではこれらのリソースを仮想化すると、具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。ここからはそれぞれの仮想化について詳しく紹介していきます。

サーバー仮想化のメリット・デメリット

事業環境の変化や、システムが増えるたびにサーバーを導入していてはコストも膨大になってしまいます。そのため企業はサーバーをより効率的かつ低コストで活用するため、仮想化技術に注目するようになりました。まずはサーバー仮想化の概要と、メリット・デメリットについて解説します。

サーバー仮想化とは

サーバー仮想化とは、物理的には 1 台しかないサーバー上に仮想のサーバーを複数設置し、それぞれ別の役割を持って稼働させます。メールはメールサーバー、 Web は Web サーバーといった具合に別々のサーバーを活用していたものが、 1 つの物理的サーバー内に構築された複数の仮想サーバーで同時に実行できるようになります。

サーバー上でシステムを動かすための OS は、 1 つのサーバーにつき 1 つです。しかし仮想化によって、複数の仮想サーバーを構築した場合、それぞれのサーバーで OS を稼働させることができます。そのため上記のように、全く違う性質のタスクを 1 つのサーバー内で実行できるのです。

メリット

一番のメリットはサーバー使用率における無駄の削減です。高性能サーバーともなると、 1 つの業務システムにおける CPU の使用率はさほど高くなく、ほとんど活用しきれていないという現実がありました。業務が増えるにつれサーバーの数ばかりが増え非常に不効率になっていたものが、サーバー仮想化によって統合されることで、 CPU の使用率も大幅にアップし無駄なく活用できます。

また、サーバー仮想化により 1 台のサーバーで処理できることから、複数のサーバーの購入費用や運用にかかっていたコストの削減、物理的スペースの削減ができます。実際、 100 台以上所有していたサーバーを、仮想化によって 2 割以下に削減できたという企業の例もあります。

サーバーはメンテナンスが欠かせないものですが、これにかかっていた人件費の削減もできます。

デメリット

サーバー仮想化のデメリットとしては、まず負荷がかかりやすい点があげられます。

物理サーバーのリソースを共有している以上これは避けられません。そのため処理速度が遅くなるといったデメリットの発生が考えられます。

また、仮想サーバーは基盤となっている物理サーバーのスペックを超えて稼働することはできません。物理サーバーのスペックが足りず仮想化に適していないような場合、大きくパフォーマンスを落としてしまう可能性もあります。物理サーバーにトラブルが起これば、仮想化サーバーで稼働している全てのシステムでトラブルが起きてしまうも、念頭に置いておかなければならないでしょう。

仮想サーバーは適切に管理しなければならず、構築やセキュリティ対策に専門的な知識が必要になります。すぐに対応できる人材がいなければ、まず人材の育成または管理者の採用から行わなければなりません。

デスクトップ仮想化のメリット・デメリット

テレワークの普及で、自宅やカフェ、コワーキングスペースなどで仕事をする人も増えました。しかしここで問題になってくるのがセキュリティ面です。データの扱い 1 つとっても漏洩などの心配があり、どのような対策をもって対応していくかが課題となりました。そこでより関心の高まりを加速させたのがデスクトップ仮想化です。


デスクトップ仮想化とは

デスクトップ仮想化とは、サーバー上に OS をはじめアプリケーションなどあらゆるデスクトップ環境を置き、個々のパソコンにその画像を転送することで利用できるようにする技術です。個々のパソコンにデータが保存されることはありません。

デスクトップ仮想化が生まれる前は Windows のマルチユーザー機能を利用した、ターミナルサービス方式が採用されていました。しかしこの頃はサーバーの性能も低く、現代のデスクトップ仮想化のように活用できるものではありませんでした。

現在注目されているデスクトップ仮想化にはこのターミナルサービス方式のほかに、仮想 PC 方式とブレード PC 方式があります。ターミナルサービス方式はサーバー OS を利用するのでコストが抑えられ、仮想 PC 方式はユーザーごとにデスクトップ環境が構築されるため、個別にアプリケーションをインストールすることも可能です。ブレード PC 方式ではユーザーごとにブレード PC を割り当てるため、故障や負荷のかかる処理を行った際も、他のユーザーに影響がありません。

いずれにせよ、ユーザー側は業務に必要なデスクトップ環境を用意する必要がなく、どこからでも等しくアクセスできる技術がデスクトップ仮想化なのです。

メリット

デスクトップ仮想化のメリットは、セキュリティが担保されるという点です。テレワークで自宅のパソコンを使用しても、データが残らないのでセキュリティが担保されます。また、スマートフォンやタブレットからも負担なく操作ができるため作業の幅が広がります。いつもと変わらない自宅のパソコンで、会社と同じ環境を整えられるというのもメリットといえるでしょう。

またデスクトップ仮想化を利用すれば、通常パソコンで行うバックアップの必要もありません。個々のパソコンが故障しても、データが消えることはないので安心です。

デメリット

デスクトップ仮想化のデメリットとして、高額な導入費があげられます。オンプレミス型の場合、初期費用はより高額になり、従業員の数によって数千万から数億円にものぼります。また、カスタマイズ性はありますが、デスクトップの構築を自社で全て行わなくてはなりません。

一方、クラウド型の場合は、初期投資を抑えることができ、運用管理もベンダーに一元化できます。しかしオンプレミス型よりもランニングコストが高くなる傾向があります。

ストレージ仮想化のメリット・デメリット

近年の IT 技術の進化に伴い、膨大なデータが集約されるようになりました。これらのデータを効率的にプールし活用していくためには、これまでのストレージでは対応が難しくなりつつあります。このような背景からストレージの仮想化が求められるようになりました。

ストレージ仮想化とは

ストレージ仮想化とは複数のストレージを仮想的に結合し、 1 つの大きなストレージを構築する技術のことです。実際は企業内の各所にあるストレージを、仮想化によって結合すれば統括的な管理が可能になります。また必要に応じてストレージを切り離したり、再び戻したりといった柔軟な活用もできます。

社内各部署によってストレージの使用量は異なり、多くのストレージを必要とする業務もあれば、そうではない業務もあります。仮想化をすれば、必要な部署に必要なストレージを割り振ることができます。また、必要がなくなれば簡単に元に戻せます。業務や事業の拡大に合わせて、今あるストレージを有効的に活用し、一元管理するための技術がストレージ仮想化なのです。

メリット

ストレージ仮想化の一番のメリットは、上述もしましたが業務の増大や縮小に合わせて、柔軟にストレージ量を変更できることです。業務ごとに整理し、再分配することも可能です。また仮想化したストレージでは、ストレージの交換や追加時にも運用を止める必要がありません。

またディスプレイ仮想化と同じように、個々のストレージでバックアップの必要がなく、一括して運用や管理ができるのでコスト削減にも繋がります。

デメリット

ストレージ仮想化では各ストレージの I/O が問題になることがあります。繁忙期などにアクセスが集中すると、過剰な I/O によりストレージに負荷がかかりやすくなります。これによりサーバーとのレスポンスも遅くなるなど、応答性能に問題が波及することも考えられます。仮想化ストレージ内には個々のストレージ全ての I/O があるため、より負荷がかかりやすくなるのです。

またストレージは非常に高度な機能を持っているため、トラブルが発生したときの対応が難しくなります。高い専門知識を持った担当者がいなければ、運用自体が難しいといえるでしょう。

ネットワーク仮想化のメリット・デメリット

IT インフランおいて、より拡張性が高く誰でも導入しやすい仕組み作りの必要性が高まりました。しかし、サーバーやストレージなどの仮想化が進み、効率的に稼働できるようになってきた一方、ネットワークリソースではさまざまな制約などもあり十分なパフォーマンスを発揮できていないという現状がありました。ネットワーク仮想化によりこれらが解決され、さらなる効率化が期待できるとされています。

ネットワーク仮想化とは

ネットワーク仮想化とは、通信回線やルーターといった物理的ネットワークリソースに、ソフトウェアを使って倫理的ネットワークを構築し、統合したり分割したりできる技術のことです。例えば仮想サーバーが増加しても、それぞれに対応したネットワークの割り当てが容易に可能になります。

メリット

ネットワーク仮想化により、ハード機器のコスト削減ができます。従来のネットワークではLANケーブル、ルーター、ファイヤーウォールなどさまざまな周辺機器の運用・管理が必要でした。仮想化すればこれらが必要なくなり、運用はソフトウェアで行われます。管理がしやすくなるので、新たなネットワークの導入コストだけでなく、管理のための人的コストの削減も可能になります。その他、セキュリティの強化にも有効で、物理機器のような故障の心配もなくなります。

デメリット

ネットワーク仮想化ではサーバーやストレージの仮想化と違い、設定や物理的接続に人手が必要な場合があります。20年以上前の技術がまだ使われていることもあり、仮想化によるサーバーやストレージの進歩に、ネットワークが追いついていないからだといわれています。ただ、このデメリットに関しては新しい技術が開発されており、データセンターでは一部既に展開されているものもあります。

データ仮想化のメリット・デメリット

企業が扱うデータが年々増加し多様化する中で、どう活用していくかが課題となってきました。また同時に堅牢なセキュリティ対策も必要になり、データの仮想化に注目が集まったのです。

データ仮想化とは

データ仮想化とは、本来別々の場所にある複数のデータソースやフォーマットが違うデータを、 1 つの仮想的なデータソースに集約してデータを統合できる技術です。ユーザーはデータ仮想化により、従来のデータベースやビッグデータ、クラウドや IoT システムに保存されたデータに、ローコストかつ迅速にアクセスできるようになります。

メリット

データ仮想化は、まずビジネスユースに適している最新データを容易に検索・入手できることがメリットです。また、企業のデータマネジメントにおいても非常にシンプル化でき、コスト削減や時間短縮が実現できます。

デメリット

データ仮想化は、ソースシステムのデータ量に左右されるというデメリットがあります。そのため場合によってはネットワーク全体のパフォーマンス低下に繋がり、さまざまなトラブルが発生するリスクがあることも覚えておきましょう。

まとめ

仮想化についての基本情報を紹介しましたが、上手に活用することで業務効率の改善や物理的なコストの削減、処理速度の向上などさまざまなメリットが享受できます。 もちろん、デメリットも存在しますが総合的には仮想化の導入で得られるものの方が多いのではないでしょうか。ICT推進を担当する方はここで紹介した情報を参考にし、ぜひ仮想化の有効な活用を検討してみてください。

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